妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(概要)
(平成17年11月2日)


厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課

1. はじめに
 魚介類(鯨類を含む。以下同じ。)は、良質なたんぱく質や健康に良いと考えられるEPA,DHA等の高度不飽和 脂肪酸をその他の食品に比べ一般に多く含み、また、微量栄養素の摂取源である等、健康的な食生活にとって不可欠で優れた栄養特性を有しています。魚介類はこのように利点が多い食材ですが、反面、自然界に存在する水銀を食物連鎖の過程で体内に蓄積するため、特定の地域等にかかわりなく、一部の魚介類については水銀濃度が他の魚介類と比較して高いものも見受けられます。
 我が国における水銀の摂取を見た場合、魚介類によるものが全体の約80%を占めており、また、水銀に関する近年の研究報告では、低濃度の水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告がなされていることから、妊婦については魚介類を通じた水銀の摂取に一定の注意が必要と考えられます。
 なお、妊婦を除く方々にあっては、全ての魚介類について、現段階では水銀による健康への悪影響が一般に懸念される報告はありませんので、健康に有益である魚介類をバランスよく摂取し、健康の維持増進に努めることが大切です。

注)胎児の健康への影響が懸念されているのは「メチル水銀」ですが、消費者等に分かりやすく伝えるため、特段の必要がない場合には「メチル水銀」とせず、単に「水銀」と記載しています。

2. 我が国における「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」の見直し

(1) 経 緯
 我が国の水銀を含有する魚介類の対応としては、平成15年6月に、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品・毒性合同部会の意見を聴いて、サメ、メカジキ、キンメダイ、クジラ類の一部について、妊婦を対象とした摂食に関する注意事項を公表しました。
 その後、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議において、水銀に関する暫定的耐容週間摂取量について、発育途上の胎児を十分に保護するため水銀の再評価が実施されたこと、我が国においても継続的に実施された魚介類の水銀濃度に関する報告が取りまとめられたこと等から、今般、注意事項について見直しを行うこととしました。
 なお、諸外国においても妊婦を対象に特定の魚介類について、摂食に関する注意事項が公表されています。

(2) 食品安全委員会への評価依頼
 水銀を含有する魚介類の摂食に関する注意事項の見直しを行うためには、2つのポイントがあります。第1のポイントは、どの程度までの水銀摂取が安全であるかを定めることです。この水銀摂取レベル(耐容量)に関しては、特に悪影響を受けやすいと考えられる対象者(ハイリスクグループ)の健康を十分に保護することを目的として決定する必要があります。このため、ハイリスクグループを特定することも大事な作業です。第2のポイントは、実際にどの程度の水銀を摂取しているか等の実態を把握した上で、注意事項の見直しを行うことです。
 第1のポイントについては、食品安全基準法により食品安全委員会の業務とされていることから、平成16年7月23日、食品安全委員会に耐容量の設定について食品健康影響評価を依頼しました。併せて、ハイリスクグループについても検討を依頼しました。

(3) 食品安全委員会における審議
 厚生労働省からの評価依頼を受けて、食品安全委員会は平成16年7月開催の委員会で審議を行うことを決定し、同年9月以降5回の汚染物質専門委員会が開催され、平成17年6月8日に開催された第6回専門調査会で審議結果が示されました。
 審議結果では、耐容量は1週間当たり体重1kgに対し、メチル水銀2.0μg(Hgとして)が示されました。また、ハイリスクグループについては胎児とすることが適切とされ、平成17年8月4日、食品健康影響評価結果として厚生労働省に通知されました。
(参考:1μg(マイクログラム)は1/100万グラム)

(4) 審議会における検討
 第2のポイントについては、厚生労働省等において実施された調査結果に基づき、第1回(平成16年8月17日)、第2回(平成16年11月24日)、第3回(平成17年8月12日)、第4回(平成17年11月2日)の4回にわたって薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会で審議を行いました。
・魚介類の水銀含有量
 厚生労働省、水産庁、地方自治体及び諸外国において実施された魚介類に含まれる水銀濃度に関する検査結果を取りまとめました。
 その結果、国内385種類、9,712検体、国外165種類、21,724検体におよぶ魚介類の水銀含有量を整理しました。

・我が国における魚介類の摂食の実態
 平成13、14年の国民栄養調査について、15〜49歳の女性摂食者における各魚介類の摂食量を特別に集計しました。

 これによると、魚介類の摂食者における平均摂食量は、魚類平均では73.6g、カジキ類65.4g、キンメダイ75.0g及びマグロ類32.2g等となっていますが、マグロ類では、人によって摂食量に大きな差があることが報告されています。
 なお、マグロ類については、独立行政法人国立健康・栄養研究所において、マグロの刺身、寿司、鉄火丼の一回分(いわゆる一人前の量)についても調査を行いました。 
・我が国における水銀暴露の実態
 我が国においては、国内に流通している食品を介した汚染物質の実際の摂取量を明らかにすることを目的とした汚染物質摂取量調査(マーケットバスケット調査)が行われています。
 この報告によると、最近10年間の水銀の推定一日摂取量平均は8.4μg/人/日であり、仮に水銀のすべてがメチル水銀であって、妊婦の体重を50kgとしたばあいであっても、その摂取量は1.2μg/ kg体重/週(8.4μg×7日÷50kg)であることから、食品安全委員会から示されている食品健康影響評価である耐容量(2.0μg/ kg体重/週)を下回っています。

・魚介類摂取量の試算
 耐容量の範囲で摂取できる魚介類の摂食量を、それぞれの魚介類の水銀含有量の平均値に基づき試算しました。具体的には、魚介類の水銀含有量の平均値が総水銀で0.4ppm、メチル水銀で0.3ppmを超えるものを対象としました。その上で、妊婦の体重を国民栄養調査から55.5 kgと仮定し試算を行いました。試算の方法は以下のとおりです。
{ 耐容量 - 他の食品から
の水銀摂取量
} + 当該魚介類に
含まれる水銀濃度
= 耐容量の範囲内で摂食
できる当該魚介類の量

3. 注意事項の見直し案とQ & A
 審議会における議論を踏まえ、次の点に留意し注意事項の見直し案を作成しました。また、正確な理解に資するため、Q & Aも作成しました。
・ 魚介類は健康的な食生活を営む上で重要な食材であること
・ 魚介類は食物連鎖の過程で水銀を蓄積すること
・ 検討している水銀の影響は、あったとしても胎児の将来の社会生活に支障のあるような重篤なものでないこと。
・ 妊婦については、一定の注意をした上で魚介類を摂食する事が重要であること。また、水銀濃度が高い魚介類を偏って多量に食べることは避けて、水銀の摂取量を減らすことで、魚食メリットとの両立が可能であること
・ 妊婦が注意事項の対象であり、子供や一般の方々は対象外であること
・ 消費者に注意事項を正確に理解してもらうことが必要であること

4.その他
 今後とも、科学技術の進歩にあわせて、本注意事項の見直しを行うこととしています。

 第1回、第2回及び第3回の審議会資料については、次の厚生労働省ホームページで御参照いただけます。
 また、第4回の審議会資料についても速やかに掲載することとしています。

厚生労働省ホームページアドレス
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/index.html